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正文 第28节

  「そんなのがいるのか。たのむ」

  やがてcたいこもちがやってきた。

  「おやc殿さま。昼間からお遊びとはcさすがけっこうなご身分で」

  いやになれなれしかった。しかしcうまれてはじめて殿さまと呼ばれcこれはなかなか刺激的なことだった。

  「いやいやc殿さまというほどのものではない。ただのcいなかざむらいだ」

  「これはまたcなんと奥ゆかしいこと。それでこそ殿さまですよ。江戸にはc殿さまなんてcはいて捨てるほどいる。下っぱの旗本なんかc直参であるというだけでc殿さまと呼ばないと怒るとくる。あっしはねcそんなやつらはc決して殿さまなんて呼びやしませんよ。たいこも

  ちだって江戸っ子だ。殿さまらしい風格をそなえた人しかcそう呼ばないんです」

  「なかなかいいことを言うな。面白い。金をつかわそう」

  「やc拝領品をいただけるとは。殿さまcありがたきしあわせ」

  「なんだかんだ言ってもcおまえは金にさえなればcだれでも殿さまと呼ぶんだろう。旗本だろうが商人だろうが」

  「まcそんなとこで。さすがは殿さま。頭が鋭い。うわさにたがわぬ名君」

  「調子のいいやつだな」

  その時cたいこもちは急にまじめそうな口調になった。

  「しかしねえc殿さま。あなたにはcなにか普通の人とちがったところがございますな。人生のかげといいますかc悲しみといいますかc暗い情熱といいますかcなにかを内心に秘めておいでだ。そこが魅力的だ。なぞめいている。江戸の軽薄な連中とはちがいます。なぜでしょう

  なあ。考えさせられますな」

  「じつはなc父のかたきを追ってc藩から出てきたのだ」

  「えcえっ。それは本当ですか。まさか」

  たいこもちはcびっくりした。本心から驚いた。きまり文句のおせじを言ったらcこんな答えが出てくるとは。吉原で豪遊しているかたき討ちなどc聞いたことがない。二の句がつげなかった。

  「ふしぎかね」

  「いえいえcもしかしたらそうじゃないかなとの予想が当ってcわれながら感心したというわけですよ。こちこちに意気ごんだりせずcまず英気を養う。余裕があります。大石内蔵助も敵の目をあざむくためc京都で豪遊をなさったとか。その作戦でもあるわけですな。遠大にして

  大がかりな計画」

  修吾は気がつきc頭をかく。

  「ついcつり込まれcよけいなことをしゃべってしまったようだな。こいつcよそへ行ってぺらぺら話しそうだな。どうしたものだろう」

  「そんなお疑いはcひどいですよ。殿さまcあっしも男だ。口は固い。決して他言はいたしません。といってもc信じちゃいただけないでしょうな。こうしましょう」

  「どうしようというのだ」

  「本懐をとげるまでcあっしは殿さまのそばをはなれない。それならご安心でしょう。きょうからは同志となります。血判を押しましょうか。あたしゃc殿さまにほれこみました。それに気前がいい。かたき討ちとはc武士道の花。お手伝いさせて下さい。人生の語りぐさになる。

  でc討入りはcいつcどこなのですか」

  「相手がどこにいるのかcまだわからんのだ。これから旅をしてさがすのだ」

  「おやおやcそうでしたか。じゃあcそのお供をさせて下さい。旅のあいだc決して殿さまを退屈させませんよ。いえcお金なんかcどうでもいい。宿泊費さえ出していただければ。じつはc打ちあけたところc旅をしてみたいと思ってたとこなんですよ」

  「面白いやつだ。おまえには妙に正直なところがある。気に入った。少しは旅も楽しくなるだろう。連れていってやる」

  たいこもちはcひたいをたたいて大喜び。

  「しめた。ありがたい。きびだんごをいただいてc桃太郎のお供になれた動物の気分がわかりますな。でcべつなお供c女はいかがです。きれいなのをひとりcお連れになりませんか」

  「女ならc各地にいるだろう」

  「各地の名産をお楽しみになるってわけですな。それもよろしゅうございましょう。じゃあc商売女じゃないcよく働くまじめなのをひとりどうです。洗濯cほころびなおしc食事のお給仕などcなにかと便利ですよ」

  「そういわれてみるとcいたほうがいいかもしれぬな。適当なのを手配してくれ」

  「だんだん具体的になってきましたな。そうときまったらcきょう限り吉原遊びはおやめ下さい。お金がもったいない。うまくいってからcまた大いに遊びましょう。その時にはcご祝儀をいただきますよ。本懐をとげたあとの祝杯。いいもんでしょうなあ」

  たいこもちのほうが熱心になってきた。そしてc旅じたくをしcいかにも働きものらしい女をみつけてc修吾の旅館に移ってきた。せかすように言う。

  「ではc出発といきますか。殿さま」

  「そうだな。けっこう江戸で遊んだし」

  「かんじんな点。かたきに会った時c勝つみこみはあるんですか」

  「そうだcそのことを忘れていた」

  「おうようすぎますよc殿さま。用心棒をおやといになりなさい。江戸にはc金に困っている浪人者がたくさんいる。よりどりみどりです」

  江戸には道場がいくつもあった。修吾はそれをまわりc推薦をたのんだ。用心棒と聞いてcそんなくだらぬ仕事はいやだとの反応もあったがcかたき討ちの助太刀と知るとcだれもまじめな表情になりcあとで仕官できるかもしれないとにおわすとc志願者の数はふくれあがった

  。浪人にとってcこんなうまい話はめったにないのだ。

  修吾は彼らに試合をさせc強いのをえらび出した。またcかたきとつながりがあってはとc身もとを調べc保証人をつけさせた。かくしてc剣術と柔術の達人をcそれぞれ一名ずつやとうことができた。

  準備がととのった。

  「そろそろ出かけるとするか。まずc東海道をゆっくりと西へだ」

  「けっこうですなc殿さま。弥次喜多道中以上に楽しくやりましょう」

  「楽しむのはいいがcかたきらしい人物に注意してくれ。それからc旅行中は殿さまと言うのをやめろ。関所の役人に変に思われたらcやっかいだぞ」

  「ごもっともで」

  のんきな旅だった。若党や中間が荷物を持ってくれる。用心棒がいるので身は安全。たいこもちのおしゃべりがつきc金は充分にあるのだ。連れてきた女はよく働きc遊ぶ相手の美女はどの宿場にもいる。

  かたきの人相書をくばりながら進んだ。

  「この人物を見かけたらc大坂へ知らせてくれ。飛脚代は当方で出す。あとで必ずお礼をするから」

  途中cすりに金を取られc困りきっている老人の旅人を見かけた。修吾は金をめぐんでやりc老人は伏しおがむ。

  「なんと情けぶかいかた。もしかしたらc水戸の黄門さまでは」

  「そんなにえらくはない。だいいちc時代がちがうよ」

  「するとc黄門さまのご子孫で」

  「おじいさんc黄門さまの信者かい。それともc本の読みすぎかな」

  あれこれ話題にはことかかなかった。

  ある宿場に着くとc国もとの藩からの使いが待っていた。修吾は聞く。

  「なにか起ったのか」

  「大坂の両替店からc藩に対する貸金のcさいそくの話があった。その金を返済するとcお蔵の小判がほとんどなくなってしまう。どうしたものかcだれもいい知恵が浮かばずc貴殿のご意見を聞きたいと思い」

  「まかしておきなさい。そのうち大坂へ行くからcその時に相手に話してc期限をのばしてもらうことにする」

  「よろしくお願いします。かたき討ちという重要なお役目の途中cお手数をかけて申しわけありません。あcそれから城代家老がcがんばるようにと申しておりました」

  「まもなく目的をとげて帰国するとお伝え下さい」

  修吾は伊勢まいりをしc京をまわって大坂へ入る。藩からたのまれた仕事は簡単だった。利息を払いcそのうち景気がよくなるという話をしておけばすむことだ。元金について安心できc利息さえとれればc貸し主は承知するものなのだ。

  それを片づけc修吾たちは大坂で遊ぶ。またc藩内の商人からもらった書面を持ちcかたきさがしの手伝いをしてくれるという同業者を訪れてみた。歓迎してくれた。

  「よくいらっしゃいました。万事はうけたまわっております。いつおいでかとcお待ち申しておりました」

  「でcかたきについての手がかりはわかったか。そろそろc討ちはたさねばならない」

  「少々お待ちを」

  さすがに全国的なつながりを持つ同業者の組織。いろいろな情報が集っていた。かたきの駒山久三郎はcまず長崎へ逃げたとわかった。それから大坂へ戻ってきたがcいつのまにか姿を消してしまったと。それを聞いてc修吾はがっかり。

  「するとc消息不明か」

  「ずっと監視はつけてあったのですがね。いっそのことcしびれ薬でも酒にまぜて飲ませcとっつかまえてしばりあげc倉庫にでも閉じこめておいたほうがよかったかも」

  「いやcそんなことをしてはcあとで評判が悪くなる。やはり堂々と討たねばならぬ。しかしcこれからどうしたものか」

  「そうご心配なさることはありません。大坂からの各街道の要所要所にc似顔絵をくばって手配してあります。いずれc報告が入りますよ。まあcのんびりとお待ち下さい。料理屋へでもcご案内いたしましょう。前祝いという意味で」

  と宴会になるのだった。すべては時間の問題なのだ。金銭による網からのがれきれるものではない。まったくc駒山久三郎としてはcとんでもない相手を殺してしまったものだ。

  一月ほどがすぎた。商人が修吾の旅館にやってきて言う。

  「あれ以来cどの街道からも見かけたという連絡が入らずc変に思っていたわけですがcやっと報告がありました」

  「どこへ逃げたのだ」

  「海路です。船に乗りこんで大坂を逃げたのです。しかしc当方だってcその点ぬかりはない。各地の港へ懸賞金をつけて手配をしておいたのです」

  「すまんなcそこまで手数をかけて」

  「いいえcこれぐらいのこと。しかしc勘定奉行になられたらcよろしくお願いしますよ。まずc山林の材木の件を。その実現の早いことを期待すればこそです」

  「わかっておる。それよりcかたきのゆくえはどうなのだ」

  「江戸から飛脚で知らせがありました。船で江戸へ着いたというわけです」

  「そうだったのか」

  「吉原でさかんに遊んでいるとのことですよ。とまっている旅館もわかっています。見張りもつけてありますからc今度は大丈夫です。しかしc逃げそうなようすもないとのこと。だいぶいい気になっているらしい。油断しているようですよ」

  「いろいろとc世話になった。このお礼はきっとする。ではc江戸に出かけて討ちとるとするか。みなc出かけるぞ」

  大編成の一行はcふたたび江戸へ。しかしcまた東海道を戻るのはつまらないとc木曾のほうをまわりc山々を見物しながらc江戸へむかう。

  万全の準備とc順調な進行。あとはcかたきを討つばかり。供の若党のひとりが言う。

  「もっとゆっくり歩きましょうよ。討ってしまえばcそれで終り。こんなふうなc期待にみちた旅ぐらい楽しいものはない」

  修吾だって同じ思いだった。すべては確実なのだ。こっちには腕の立つ用心棒がいる。失敗はありえない。そしてc討ちはたして帰藩すればc栄達が待っている。

  そうなればc自分に対してcそろばんと口先だけの人間だというかげ口などcだれも口にしなくなるだろう。武勇にひいでたさむらいだとの名声c人気があがる。勘定奉行という地位c加増もある。まさに藩内随一の実力者。なにもかも思いのままにできるのだ。

  その内心を察するかのように江戸へ着くとたいこもちが言った。

  「どうせ勝つんですからcはなばなしくやりましょう。あっしが行ってcうまいこと相手を日本橋まで連れ出してきます。そこでお討ちなさい。評判になりますよ。かわら版にもなるでしょう。大げさにcうまいぐあいに書いてくれるにきまっています。少しは金をつかませておい

  たほうがいいかもしれない。それを何枚も持って帰国すればcこんないいおみやげはありませんよ」

  「そうかもしれぬな」

  「助太刀のお二人がおいでなんですからc負ける心配はない。ねcそうでしょう」

  「よろしくたのむ」

  「お祝いの会はc盛大にやりましょう。楽しみですな。まだお金はあるんでしょう。残ったお金はcぱあっと使ってしまいましょうよ」

  打合せはすみcかたきの駒山久三郎は日本橋へとおびき出されてきた。べつに用心棒も連れていない。待ちかまえていた修吾は声をかける。

  「やあやあcなんじは駒山久三郎だな。半年前cわが父c赤松修左衛門を殺害して逃走。ここで会ったからにはc逃がしはせぬ。覚悟しろ」

  その大声でc人だかりができた。助太刀の二人はcすぐにでも飛びかかれるようにとcそばにいる。しかしcなんということc相手の駒山は平然としていた。

  「わかっているよ。覚悟はできていた。だからこそc長崎へ見物にも行ったのだしc思い残すことのないようにとc吉原で遊んだのだ。ついに金がなくなりcつけがかなりたまってしまった。ちょうどいいところへ来てくれた。もうcどうもこうもならないのだ」

  「えらくあきらめがいいな。なんとなくc張り合いがなくなる。しかしc武士の意地c討たねばならぬのだ。覚悟しろ」

  「覚悟のことならcそれ以上はくどいよ。しかしcなぜわたしが赤松修左衛門を切ったのかc知っているか」

  「そんな理由cいまさらどうでもいいことだがc聞くだけは聞いてやろう。しおらしさに免じて」

  「なにも知らぬようだな。商人からの賄賂の分け前をめぐっての争いのあげくだ。わたしがまとめた商談だった。だからc半分ずつという約束だったのにc三分の一しかくれなかった。そこでcかっとなって」

  「そうとは知らなかった」

  「考えてみればc乱脈をきわめた話さね」

  修吾には事情がわかってきた。この豪勢なかたき討ちに出られたcあの千両箱の山の意味が。そういえばc修左衛門は勘定奉行をなかなかやめたがらなかった。金をためる面白さにとりつかれてしまったのだろう。ありうることだ。自分だってc藩に帰ったらそれをやるつもりな

  のだ。修吾は言う。

  「そういう藩の秘事を知られていてはcなおさらためにならぬ。ここで見のがすことはできない。覚悟しろ」

  「またか。くどいね。わかっているよcわかりすぎている。金にものをいわせてc貴殿がかたき討ちにやってくることもね」

  「だからcどうだというのだ」

  「覚悟はできているがcなにも死にたくはない。つまりc文書を作ってあるというわけさ。藩の内情についてだ。それを読まれるとc藩内の取締り不行き届きということでcお家はとりつぶしになりかねない。殿さまはじめ家臣一同cみな困ることになるぜ」

  「いったいcなにを書いたんだ。教えろ」

  「知りたいだろうな。それは簡単なことだ。わたしを殺してみるんだな。わたしが死ぬとcそれが幕府の評定所にとどくしかけになっている。そこで表ざたになりc知れわたるというわけさ。さあcどうぞcご遠慮なくお切り下さい。それとも」

  藩医三代記

  海ぞいの地方にc小さな藩があった。とくに問題をかかえこんではいない。江戸の幕府からにらまれてもいずcまあまあといった状態でおさまっていた。

  そこの藩医に平山宗白というのがいた。禄ろく高だかは五十石。医師であっても身分は家臣でcその点ほかの武士と変りはない。苗字みょうじもあり腰に大小をさしている。もっともc頭はちょんまげでなくcくわい頭というcなでつけたような髪形にしてい

  る。彼は下級武士むけの医師だった。

  藩医はcあと二人いた。いずれも百石でcおめみえ以上cすなわち殿にお目通りできる資格を持っている。そしてc坊主頭。殿の側室や侍女たちの住居c奥御殿にも出入りするのでc情事に発展するのを防ぐためcこんな習慣となっているのだろう。

  ひとりは殿の専属。定期的に殿の健康診断をやりc参勤交代の時はcいっしょに江戸へ行く。もうひとりはc上級家臣たちの担当だった。

  この三人cいずれもそう忙しい仕事でなくcのんびりした毎日だった。藩医は世襲でありc他の家臣たちのようにcお城づとめをして各種の役目を歴任することはない。

  藩内の医師はcこの三人だけ。領民むけの医師などいなかった。町医者がいるのはcよほどの大きな町だけでcそこにおいても数はしれている。そういう時代だったのだ。

  宗白のむすこにc元服を二年ほど前にすませたc宗之助という少年がいた。彼の不満は三つあった。

  元服の時を境にcそれまでやっていた剣術の稽けい古こをやめさせられてしまったこと。剣術ぐらい面白い遊びはないのに。仲間たちからばかにされているように思えてならない。

  第二にc勉強ばかりやらされること。藩校にかよって本を読みc帰宅するとc父に与えられる

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